子育て倦怠期
長引く風邪で体調がかんばしくないせいもあるだろうが、8月下旬は毎日子育てにウンザリしていた。
しんどい。
しんどいからグッタリしていると、サトイモに髪を鷲掴みに引っ張られ、
「ママ、ねたらダメだよ!」
と起こされる。
気力を振り絞って家事をしていても、
「ママこっち来て!いっしょに遊んで!」
と服を引っ張られて邪魔をされる。
力が強くなってきたので、踏ん張っていても耐えられない。
30分程度一緒に遊んだら大丈夫かと思い、
「じゃあそろそろごはん作るね」
と場を外そうものなら、さっきよりひどく泣き叫ぶ。
最後にはサトイモがどんどん調子に乗って、おもちゃを投げたりソファに落書きしたり大事な書類をクシャクシャにしたり、という悪さを始めるので、
「ええ加減にせぇよ!」
とブチ切れる。
怒られると、
「抱っこしてぇ~!」
と泣いてすがりついてくるのが最近のパターン。
それがまた腹が立つので、無視して逃げるとサトイモは泣き叫びながら追いかけてくる。
「寄ってくるなよ!」
と拒絶し、突き飛ばす。
突き飛ばされても突き飛ばされてもサトイモは「だっこして!」と突進してくるので、私がトイレに閉じこもるか、サトイモをどこかに閉じ込める。
向こうは意地でもひっつきたがるし、こっちは意地でも離れてほしくなる。
こじれた恋愛関係に似ていて、追いかけられたらとことん嫌になって逃げたくなる。
誰か助けて!が叶ったり叶わなかったり
そんなときは、心の中で夫に、
「早く帰って来て!」
とSOSを送る。
全く空振りのときも多いけれど、たまにいいタイミングで帰って来てくれることもある。
夫は何があってもサトイモのことが可愛くてしょうがないらしい。
「俺の分身やと思ったら、憎らしく思えるわけがない」
そういう人であってくれてよかった、とホッとする。
もし自分がシングルだったら確実に児童虐待をしてただろうな、と思う。
幸い、パートナーが子育て協力的なだけではなく、経済的にも中流、職場も子育て世代に寛容なので、大変恵まれた環境にいる。
だけど、パートナーが不在だったり非協力的だったり、経済的に困窮していたり、職が不安定だったりブラックだったりしたら、私だったら確実に育児放棄していただろう。
(もちろん、子どもの気質にもよるので、ほかのお子さんはサトイモみたいに難しくないかもしれないけど。)
そして、ときどき、
「だって、子育てしたくてしてるんじゃないもん」
という言い訳が、自分の中で黒く渦巻く。
それがどれだけ残酷な言い訳なのかはわかっているけれど、思ってしまうものは仕方がない。
ときどき、シングルのままだった自分を考える。
どっちが幸せかと問うてみる。
夫なら、「絶対サトイモがいる世界だ」と答えるだろう。
私は、どっちも同じくらいの幸福度だろうと思う。
40年も生きてきたら、母になってもならなくても、私は私。
最近の問題行動
父親である夫に対するサトイモの態度は、母親である私に対する態度と全く違う。
最近明らかに、私を困らせようとしていらずらをしているのが私にはわかるのだ。
それが、善悪の判断がわからずに悪さをしていた1~2歳と違うところ。
怒られてもいいからママの気を引きたい、というのがわかる。
わざと怒られるようなことをしておいて、
「抱っこして」
と愛情を確認するような態度をとる。
まるでメンヘラかまってちゃんだ。
そういうタイプの人間とは、なるべく付き合わないようにしてきたのに。
結局、それって愛情不足なんだろうな、とサトイモを不憫に思う。
私が寂しさをあまり感じないのは、母がありあまるほど私に愛情を注いでくれからだ。
うっとうしいほどに。
母のように愛情を注いであげられないことが申し訳ないなと思う反面、
「私なりにできる限りやってるのに、これ以上どうせぇっちゅうねん」
と、サトイモの貪欲さに腹立たしくなる。
好かれたかったら好かれるような行動をしてくれよ、と思う。
友人にそれをポロリとこぼすと、
「無条件の愛情ってそういうことじゃないよね」
と言われてしまった。
でもねぇ、わざわざ歯磨きしてやってんのに髪の毛引っ張ってくる相手に、笑顔で応対なんかできないよ。
ときどき、
「ママの言うことをきく良い子しか抱っこしない!」
と言って牽制してみる。
子育て本では最悪の方法とされている言い方だ。
条件をつけてみたり、脅してみたり、暴力と恐怖で支配してみようとしたり、タブーとされている方法も使ってみたけれど、サトイモは何も変わらない。
私は100%の愛情を注いでいるつもりだけれど、身を粉にして120%与えるしか方法はないのだろうか…。
今日は買ったばかりのワイヤレスイヤホンのイヤーパッドを外されてなくされた。
私の人生から音楽まで奪うのか息子よ…。