3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

運動会とプライド

一学期の終わり頃、サトイモは少し幼稚園に慣れたような兆しがあった。

それなのに、7月下旬から8月いっぱいの夏休み期間=共働き家庭の子たちのみの「預かり保育期間」を経て、二学期に入ると、再び問題行動が起きるようになった。

先生たちから、

「せっかく慣れてたのに、また逆戻りしてしまいましたね」

と言われてしまった。

 

通常保育と預かり保育でどれくらい違いがあるのか、様子を見たわけではないので詳細はわからない。

通常保育は年齢別のクラス分けがしてあって横並びだけれど、預かり保育は年齢による区別がなく、年長さんから年少さんまで一緒に過ごす。

預かり保育ではカリキュラムもカッチリしていなくて、比較的自由遊びの時間が多いようだ。

先生の話によると、年少さんの中でも3月生まれで最も幼いサトイモを、年上のお兄ちゃんお姉ちゃんたちがすごく世話したがるということだった。

かまってちゃんのサトイモにとっては、お兄ちゃんお姉ちゃんがかまってくれるから、預かり保育は居心地が良いのかもしれない。

 

二学期の始まりは運動会の練習の始まりでもあった。

三角コーンを周って戻って来る「かけっこ」で走って行ったまま戻ってこないとか、リレーで次の子にタッチしない、とか。

サトイモくん、タッチ!タッチ!」

と周りから口々に言われると余計にふざけて、手を挙げたまま足踏みしたりとか。

 

ルールに沿って皆と同じことをやるのが苦手なサトイモだから、運動会の練習は面白くなかったかもしれない。

4月頃は列に並ぶこともできなかった子だ。

運動会で整列して体操やダンスをするなんて、不得意に決まっている。

 

運動会の練習が下手なだけならいいが、そのほかの時間でも相変わらずお友達が遊んでいるボールを横取りしたり、食事の時間にテーブルの上に乗ったり、お昼寝の時間にお友達を起こしてまわったりと、先生に別室に連れていかれて注意を受けるということが続いて、副園長先生から、

「子育て相談を受けてはどうでしょうか」

と勧められてしまった。

無料で受けられる支援なのでありがたく申し込んだけれど。

 

初めての運動会

そして先週の土曜日、とうとう運動会当日を迎えた。

コロナ対応で、年少・年中の午前の部と年長の午後の部の二部制、観覧できる保護者も園児一人につき1名のみという制約付きの開催だった。

それでも、保護者を入れて開催してくれたことはとてもありがたい。

 

年少さんの出番は、入場、開会式、体操、ダンス、リレー式の障害物競争、閉会式、といったところ。

サトイモは列に並んで入場できるのかしら…、とそこから心配していたけれど、一応ほかの園児たちに引けを取らず、ちゃんと歩いてきて、開会式の園長先生のあいさつの間もちゃんと立っていることができた。

 

全体を見れば、フラフラしたりおしゃべりしたりしている子がけっこういる。

うちの子だけがダメなわけではない、ということがわかってホッとした。

な〜んだ、ちゃんとできている子のほうがマレじゃないか。

 

体操にしてもダンスにしても、全部がちゃんとできる子なんてほぼいない。

ところどころ、自分ができる部分の「振り」だけやっているというかんじ。

サトイモはサビの手を叩いてジャンプするところだけちゃんとやっていた。

それだけできただけでも、私はすごく誇らしい気持ちになった。

 

そうはいっても、問題児サトイモ

年中さんの競技中、園庭の横のベンチでじっと待っていられず、樹の下に落ちているドングリを拾い始めた。

出番になったらすぐやめればいいのに、夢中になってしまって、先生に抱っこされて列に戻された。

拾ったドングリを体操ズボンのポケットにいっぱい詰めたまま。

 

さらに、障害物競走では得意の鉄棒で上手な足掛け回りを見せてくれた。

これはサトイモの得意芸で、練習のときから、

サトイモくんが前に出て、みんなのお手本をしてくれてるんですよ」

と先生もほめてくれていた。

そりゃ、赤ん坊の頃から室内物干しに登りまくり、ベランダの避難梯子にぶら下がりまくっているサトイモだもの、鉄棒は得意中の得意である。

何にでも登ったりぶら下がったりするサトイモには困ったものだけれど、こういうときに役に立った。

 

とはいえ、本番でグタグタになることだってあるから安心できないぞ、とハラハラしつつ見ていた。

けれど、結果は順調。

無事足掛け回りもでき、跳び箱も乗り越え、折り紙の花を取って走って戻って次の子にタッチできた。

 

コロナ禍だから大声で応援できない。

思いっきり拍手したかったけど、スマホで撮っていたから手を叩くこともできなかった。

それでも思わず手を叩きそうになって、動画がブレてしまった。

 

メダルあげます

閉会式のとき、園長先生が、

「頑張ったみんなにプレゼントを用意しました」

と挨拶をした。

そして各組の代表に、表彰式形式でメダルの授与が行われた。

なぜか、その代表にサトイモが。

園長先生から皆の前でメダルを首にかけてもらった。

 

メダルは円に厚みがあって、中に小さなボールが入っており、迷路のゲームができるオモチャになっていた。

閉会式そっちのけでメダルに夢中。

メダルは後ほど全員に配られたけれど、代表で先にもらったというアドバンテージが、サトイモの心には響いたように見える。

 

家に帰ってから、夫と一緒に動画を見ながら、

サトイモくん、すごく頑張ったね!」

「頑張ったからメダルもらえたんだね!よかったね!」

サトイモを称えた。

 

それが少しサトイモのプライドになったように思える。

発達支援教室の先生にも、

「ぼく、うんどうかい、すごくがんばったんだよ!」

と言ったらしい。

幼稚園にも嫌がらずに行くようになった。

 

ストライダーの大会と違って、練習して、失敗して、少し嫌な思いもしつつ、それでも成功して、皆に認めてもらえたことが、サトイモを成長させた気がする。

 

子どもってこうやって大きくなっていくんだな。