3歩前のことを忘れる女のサブカルと介護の記録

神戸に住む40代波野なみ松の、育児と趣味と要介護両親の対応に追われる日々の記録。

エンジョイカップ出場と人生の勝敗

9月25日、サトイモストライダーエンジョイカップ六甲山ステージに参加した。

3才の部。

 

ストライダーとは、ペダルがなく足で蹴って進む自転車。

最近の幼児は三輪車と自転車の間にこれに乗るのが流行りである。

ストライダーを乗りこなせていれば、補助輪なしで自転車に乗れてしまう子も多いらしい。

お友達が公園で乗っていたのをすごくうらやましがっていたので、サトイモには3歳のお誕生日にストライダーをプレゼントした。

親のひいき目だけれど、けっこう上手に乗りこなしている。

 

夫が電車の広告でストライダーエンジョイカップという大会があるのを見つけた。

strider-enjoycup.jp

場所も六甲山だしチャレンジさせてみようか、と夫は最初乗り気だった。

ところが、エントリーに3,000円かかり、会場である六甲山アスレチックGREENIAの入場料でも大人一人3,000円かかるというのを知ってから、

「金儲けのためにやっとるような大会には出んでもええ!」

と夫はケチをつけるようになった。

 

金額が妥当かどうかはわからないけれど、何でもタダでできるわけはない。

経験はプライスレス。

「本人がやりたいというならエントリーするからね!お金は私が払います!そのために私は働いてるんだから!」

と私は夫にタンカを切った。

「ビンボったれはすぐにカネカネいうから嫌やわ!やりたいことくらいやらせてあげてよ!」

 

YouTubeで過去のストライダーレースの動画を見せ、

「これやってみたい?」

サトイモに尋ねてみると、

「うん。やってみたい」

と言う。

写真や映像を見るとどこにだって、

「ここにいってみたい。こんどいこうか」

というサトイモ

ミニカーのカタログに載っているSikuというメーカーのドイツ工場を見ても今度ここに行こうと言い、テレビで大相撲を見ても国技館に行ってみたいと言っていた。

ストライダーエンジョイカップにしても、おそらくその延長線上だ。

レースの意味もわからず、「ここにいってみたいよ~」と二つ返事。

 

我が子を知る

大会に出るために、ひじとひざを守るプロテクターと手袋を買い、一応は練習をした。

目標は、「泣かずグズらず完走すること」。

YouTubeの過去映像を見る限り、グズって出走できない選手がいたり、コースアウトする選手がいるのはあるあるみたいだ。

 

サトイモストライダーの練習でもまともに走りを見せたことがない。

落ちているドングリを拾いながら走っていたり、蝶々が飛んでいると追いかけていってしまったりという具合である。

本番でドングリが落ちてたり蝶々が飛んでたら終わりだな…、と思っていた。

サトイモが赤ん坊のとき、ハイハイレースで逆走した前科がある。

だから完走できれば、ひとまずOK!

 

エンジョイカップでは、最初に試走をさせてくれる。

「いつもは危ないからスピード出しちゃダメだよ、って言うけど、今日は好きなだけ飛ばしていいんだよ。お山があったりガタガタ道があったりしてコースも面白いよ。思いっきり楽しんでおいで」

そう声をかけてサトイモを送り出した。

ニコニコして走っているサトイモ

時間いっぱい練習させればよかったのだけれど、何周かしたところで夫が、

「もうええやろ。かなり密やから避難しよう」

と言い出した。

確かに、緊急事態宣言が出ている最中だとは思えないほど混雑していた。

本番のレースと違って全出場選手がみんな練習するのだから、密になって当然である。

サトイモも素直に親の指示に従ってくれた。

 

そして本番。

夫が付き添ってレーンに並ぶ。

「レディ、セット、ゴー!」

の掛け声とともにゲートが倒されてスタート。

 

…スタート!

 

スタートぉぉ!!!!

 

なかなか走り出さないサトイモの背中を、本来ならダメだけど夫が後ろからちょっと押し出す。

めちゃくちゃ出遅れて走り出したサトイモ

そこからでも全速力を出せばもうちょっと追いついただろうけれども、ニコニコしながら悠然と走っていく。

恐るべきマイペースぶり。

「ゴーゴーゴー!はやくはやく!!」

焦って声をかける私に対し、サトイモは手を振りそうな余裕さえ見せる。


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「ここまでレースに不向きとは思わんかったな…」

サトイモの走りを見ながら、夫はつぶやいた。

 

悠々とゴールを決めて、ダントツのビリッケツ。

一応、

「よくがんばったね!楽しかったね!楽しんだなら100点だ!」

と声をかけるものの、内心は複雑である。

まあ、目標が完走だったんだから十分すぎる結果ではあるのだけど…。

 

その後、敗者復活戦もあったが、結果は同じ。

ダントツのビリケツ!ゲトッポ!最下位!

 

「あいつ、レースが何かわかってへんわ。前の子を抜かしたらあかんと思ってるんちゃうか」

と夫が言ったように、障害物がある細い道ではわざわざ前の子が行くのを待ってから通っていた。

 

緊張するでもなく、悔しがることもなく、マイペースを崩さず楽しんでいるけれど、競争心が著しく欠如している。

サトイモってそういう性格の子だったのか…。

 

終了後に「がんばったで賞」のメダルをもらって、首にかけてもらったサトイモはとても喜んでいた。

表彰台に乗って記念撮影もした。

せっかくだから1位のところに上がればいいのに、

「3さいだからここだよ」

といって、サトイモは3位のところに乗った。

「やるからには何でも1番を目指せよ!」

と言ってみたものの、競争を知らない3歳には理解してもらえない。

 

勝ち負けが人生のすべてではない、けれど

サトイモに競争心が欠如していることが発見できたのは収穫だった。

これは長所でもあるけれど、大きな短所である。

 

だいたい、私がそうだからだ。

子どもの頃よく母親に、

「あんたには競争心がない、負けじ根性がない」

と言われていた。

「なにくそって思いで頑張らんか!」

そう言われたって、負けじ根性なんかないものはないのだ。

 

その結果、

「悔しいから何が何でも頑張る!」

ということができなかった。

人生を振り返って、それが不足しているから自分はダメだったんだなぁ、と思う。

成功している人はやっぱり負けじ魂があるのだろう。

 

私はダメだったけど、サトイモはまだ間に合うはずだ。

まだ3歳だもの、これから負けじ魂を植え付けていけるかもしれない。

 

勝ち負けだけが人生だと思う人間になってほしくなくて、これまで勝負をあおったり「勝つこと」だけに価値があるような発言は意図的に控えていた。

でも、このままだと「勝つこと」の価値すらわかっていない子になってしまう。

私は知らないからこそ、「負ける悔しさ」と「勝つ喜び」を知っている人間に育ってほしい。

 

これからはどんどんあおっていこう。

努力して、チャレンジして、勝つことに価値があるんだよ、と。

平和ボケの甘えん坊お坊ちゃん改造計画を練らないといけない。